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ストック制作

ストックフォトをトレースすると著作権侵害に!?知っておくべき権利の話

こんにちは。2021年5月、あるツイッターでこんな話題がありました。Xというサイトで公開されているイラストのうち、公開済の写真と酷似しているものが複数点あるというのです。Xサイトのアカウントは、写真の著作権があるY作者とは異なるもの。つまり、写真がイラストに模倣された形。著作権侵害です

この事件自体には私の作品は良くも悪くも無事(?)ですが、今後もストックイラストやストックフォトを続けたいと思う人たちにはとてもショッキングな事件。今回は、「ストックフォトをトレースすると著作権侵害になる」ということの危険性や二次被害、写真を素材として使いたいときの考慮事項についてまとめます。

著作権とは

著作権とは「作品を創作した者が有する権利」のこと。英語では copyright です。極端な話、ノートに書いた落書きも、口ずさんだ音源も、作ったコンテンツは絵でも写真でも音楽でも映像でも、すべて作った人のもの。

作った人がその作品をどのように扱うかを自由に決められる権利、それが「著作権」なので、書籍掲載や広告媒体への利活用も「著作権の保有者が利用者に利用権限を付与」します。(注:ものすごくざっくりした表現ですが、まずはこれが基本系です)。

著作権の譲渡とは

著作権の譲渡とは、文字通りの意味です。「著作権を他者にゆずる」ということ。言い換えると「『どのようにこの作品を扱うかどうかを決める権利』を相手にゆずる」という意味です。

例えば、Aさんが丹精込めて描いた素晴らしいイラストがあるとします。Aさんはその作品の著作権をBさんに譲るとします。Bさんは、これをTシャツにプリントしたらめっちゃ儲かるやん!と考えてTシャツを販売するとします。さて、Aさんは・・・無報酬です。なぜなら、著作権を譲渡しているから。著作権を譲渡してしまうと、「私が作ったものなんだから私にもお金を払ってね」という理屈が通らなくなるのです。

ストックサイト上での著作権譲渡に対する考え方の違い

ストックサイトの場合、著作者と利用者の間にストックサイトが介在します。このストックサイト上の作品の扱いは、それぞれのストックサイトで明確に定められています。ストックサイトに作品を投稿する人たちは、特段「著作権の譲渡」についての記載に注意を向けねばなりません。

「著作権を譲渡するか譲渡しないか」はサイトごとに異なります。
(下記は2021年5月現在の情報をもとにした一覧です)

ストックサイトストックサイトへの著作権譲渡が必要 / 不要
イラストAC必要(著作権はイラストACに譲渡しなければならない)
PIXATA不要(著作権は作者でOK)
Adobe Stock不要(著作権は作者でOK)
Shutter Stock不要(著作権は作者でOK)

そう。ご覧の通り、必ずしもストックサイトすべてで著作権の扱いは同じわけではないのです。例えば上記のリストの中でいえば、イラストACは「著作権を譲渡する」ことが作品登録の条件になっているのです。ストックサイトは上記以外にももちろん様々存在します。ご自身の登録しようとしているサイトはどうなんだろう?と思った方は、各サイトの条項や規約の文書を必ずご確認ください。

イラストACはユーザが無料でイラストをダウンロードすることができる人気のストックイラストサイトです。個人から大企業まで幅広いタイプの人たちが利用しています。投稿者側の視点で見れば、有料のストックサイトよりも幅広い人たちに作品を見てもらうチャンスは増えます。もし利用するのであれば、著作権譲渡の意味や効果をよく考えて投稿作品を選びましょう

トレースとは

トレースとは「すでにある物をなぞる」こと。お裁縫のトレーシングペーパーという薄い紙をご存知の方は、そのイメージを持っていただくとわかりやすいと思います。

デジタルの世界では、このトレース方法は描画するアプリの種類や搭載されている機能を利用するかどうかによっても様々な手法があります。illustratorの場合、「画像トレース」の機能を使って自動的に線をベクター形式で抽出したり、もしくはiPad版であればレイヤーとアップルペンシルをうまく組み合わせてiPad上でなぞり描きをする方法もあります。

ストックフォトのトレースによる危険性と二次被害

仮に人気の構図で撮影されたストックフォトをトレース元の画像に選択できたら、トレースして作ったイラストもきっと好評になりそうですよね。(実際、冒頭にご紹介した事件の盗作イラストもDL数はかなり多かったようです)

でも、これは「盗作」で「著作権侵害」に該当してしまいます。そんな盗作イラストが別のストックイラスト上で公開販売されたとしたら、どうでしょう。作った本人はおそらくウハウハだと思いますが(表現が古くてすみません)、ダウンロードした素材を使ったクリエイターも、そのクリエイターから納品された企業も盗作だと検知できない、もしくは検知するまでに時間がかかるケースがほとんどでしょう。

そこからさらに派生して、仮に後から「これ私の写真が使われてる!?」と気づいた人がいるとします。その著作者はどんな経緯でそのイラストが公開されているかは不明です。著作者から企業へ、企業からクリエイターへ、クリエイターから素材元へ、最終的には公開主へとその問い合わせは行くでしょうが、少なくとも企業側としては想定外のトラブルです。

そう。ウハウハな本人の些細なたくらみだったとしても、盗作品のダウンロード数が増えれば増えるほど被害も火だるま式に増えていくのです

さらに今回、例に登場している事件の当事者は写真の著作者と連絡が取れないままアカウントごと消えたそうです。著作者から直接連絡もできない状態に。悪質なケースですね。

もし自身のイラストや写真が同様の被害にあったと思ったら、スクリーンショットや写真に残すなど、何かしら記録に残すことも忘れずにしておきましょう。

写真を素材に使いたい場合のトラブル回避策

ストックフォトをトレースして疑似作品をイラスト化することは絶対にお勧めしません。というか、やってはいけません。NGです。何が何でもやめましょう。(その逆で、ストックイラストから類似構図でストックフォトを投稿する行為ももちろんNGです。)

でも「写真をもとにイラスト化を試みる」という点では、アイデアとしては素敵ですよね。いい写真があれば、いい絵が描けるというシナリオそのものは実は悪ではありません。写真をイラスト素材の資料として使いたい場合、トレース元の作品として使えるケースと使えないケースは抑えておくとよいでしょう。

シナリオ例法的に許可される条件(基本の考え方)
ウェブ上で公開されている写真を使って手元で練習私的使用のための複製(著作権法第三十条)の範囲内で利用
著作権を持たない写真をトレースしたイラストを公開著作権を有する者からの許諾が必要
著作権を持たない写真をトレースしたイラストを販売著作権を有する者からの許諾が必要
自分自身が撮影した(=著作権がある)写真をもとにイラスト化して公開モデルリリースが必要

著作者からの許諾が例外的に不要なケースもあります。詳細は文化庁のサイトも併せてご参考ください。

補足:モデルリリースの必要性

モデルリリースとは「肖像権使用許諾書」のこと。肖像権は被写体が所有しています。写真自体の著作権があなたにあったとしても、ストックイラストへ公開する場合にはモデルリリースが必要な場合があります。例えば人物写真の場合、被写体となる人物にストック素材への使用を同意してもらっておく必要がありますね。ただし、モデルリリースでどのように記載したり合意しておけばトラブル回避ができるのか、という点は細かな配慮が必要です。不安な方は弁護士等に相談するのも一案です。

ということで。シンプルに言うと「人の作品を勝手にビジネスに使ったらあかんよ」なんですけれども、商用利用可否の話は本当に奥が深いです。安易にSNSやウェブサイトで公開をする前に、これは本当にいいのかなとまずは一歩踏みとどまって。法的にOKかNGかも整理した上で公開可否を判断しましょう。

本記事が少しでも、健全なストックイラストやストックフォトライフに貢献できることを祈っています。